定時制課程52名、通信制課程107名の卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。今、卒業証書を手にされ、喜びや達成感をかみしめておられることと思います。

ご家族の皆さまにもお祝い申し上げます。おめでとうございます。

卒業生の皆さんにとって、高校生活は新型コロナウイルス感染症の影響を強く受けたものでした。3年前、それまで何の制限もなかった学校生活や友だちとの語らいが、マスクを着け、お互いに距離を保ち、ときには内容を変更して行うものになりました。この大きな変化に戸惑ったり窮屈さを感じたりした人も多かったと思います。

しかし、このような制約にも負けないたくましさや創造性を発揮してくれたのが皆さんでした。学園祭ではさまざまに工夫された内容が盛り込まれ、新しい碧雲祭になりましたし、宍道町をフィールドにした活動も年々種類が増え、裾野が広がりました。

通信制課程では、今年度レポートを改訂し、知識だけではなく、思考力や判断力、表現力の育成も一層意識したものになりましたが、それ以上に自律して学ぶ力が身についたのではないでしょうか。また、アルバイトを続けることで、働くことの意義ややりがいを知り、社会人として自立する自信をつけた人もいると思います。

卒業生の皆さん、宍道高校生として日々積み上げてきたものに誇りをもってください。皆さんのこれまでの生活は、自分の苦手や今までできなかったことに挑戦し、自分の強みや適性を見いだし、将来社会の担い手となる基盤を築いていくものでした。本校の目指す「自分の能力を発見し、他者を敬愛する心を育て、自分自身を律することができる立派な社会人となること」をそれぞれに達成してくれたと思っています。

宍道高校で、また宍道町をフィールドとして学びを重ねたプロセスに自信をもち、次への一歩を歩み出してほしいと思います。

また、本校の特徴として「多様性」があります。それぞれに異なる背景や経緯をもつ人たちがここに集い、学んでいます。その中で、自分とは異なる他者を受け入れ、敬愛し、協働していく。その大事さと、ときには難しさも実感してきたと思います。この経験を今後に生かしてください。宍道高校で学んだ皆さんには、たとえ自分がマジョリティ(多数派)の立場にあったとしても、マイノリティ(少数派)の立場に立つ人の思い、見えにくいものに気づく力があると信じています。

社会へ出ても「学び」は続きます。これからも学び続ける皆さんに、昨年度の卒業生の言葉を贈ります。

「自分の成長を知って気づいたのは、春が来るのをただ待つのではなく、自分から花を咲かせようとする力こそが大事なのだということ」

自分の内に潜む可能性や力に、自分自身が蓋をすることなく、自分を信じて挑戦を続けてください。また、挫折しそうになったときには、通信制のモットーである「あせらず 休まず あきらめず」を思い出してください。

世界も日本も多くの課題を抱えています。そのような社会に生きていく者として、皆さんには、自分と多様な他者とをともに大切にし、互いの異なるよさを認め合い、それを原動力として新たな価値を生み出していくことを期待しています。

卒業生の皆さんが、本校で得た力を糧に、次のステージを力強く歩んでいかれること、そしてその日々が充実した幸せなものとなることを心より願って式辞といたします。

令和5年3月12日

島根県立宍道高等学校長  村松 洋子